*ちょっぴりBLっぽい描写が出て来ます。大して色っぽくありませんが、ご注意を。(…ヲイ)

 



  ―― 人肌の懐っこさ、ホントに知ったのはいつだったろか。


これぞ秋めきというものか、朝晩は随分と過ごしやすくなって。
しんとした夜陰の中、
どこからか聞こえるのは りぃりぃとコオロギの声。
真夏は冷房がんがんに効かせた上で、
寒がって擦り寄ってみたりもしてたのだけれど。
そういうややこしいお膳立てというか、
下準備というかが要らないってのが何だか有り難い。

 “……勿論、そんな言い分、ルイには絶対聞かせねぇけどな。”

ところどこがちょっぴり柔らかくなり始めてるシーツの上。
相変わらず長い腕に、ぐるり囲われてる格好で。
まだまだ ちっとも眠くはならないからって言って。
なんてこともない話をぽつぽつと、
部屋のしじまに染ませるようにして紡いでる。

出会ったころに比べれば、もう随分 背丈も伸びたし、
肩幅だって腕や足腰だって、ずっとずっと育ったはずだのに。
なのに、此処はいつもいつでも、
窮屈にはならないまんまの居心地のいいトコで。

広くて深い懐ろは、
革張りのソファーみたいなんだよな。
いきなり骨が当たる訳じゃなく、
かと言って どっかぶよぶよと柔らかすぎもせず。
がっつり大きな骨格に、ほどよい堅さの肉が頼もしい厚さでついていて。
身体鍛えると肌も鍛えられるもんなのか、
よーくよーく鞣したみたいな、
丈夫でしっかりした精悍な肌が、
こっちもはだけてた肌へ、直に触れると心地いい。
暖かいし、気持ちいい肌触りがして、
感触と温みから離れがたくて、それで。
柄になく甘えて見せて、こちらから擦り寄ってしまってる。

知り合ったときにはもう、
どこか貫禄があって おっさん臭かったからだろか。
ルイってあんまり変わってないのな。
相変わらず猫っ毛だし、目ヂカラ凄げぇし。
意志の強さが食いしばってそうさせたものか、
長い舌が愛嬌あるけど、
口許の形は意外なくらいに、引き締まってて整っていて。
隠しごとが下手で、でも、
人へは見せんな、ちっとは隠しとけって思うよな、
そんな態度取ったり いい顔したりすんのへ、
こっちがどぎまぎさせられてもいる、ここんとこ。

到底あか抜けた二枚目なんかじゃないけれど、
鋭角で男臭い顔つきは野性味があって嫌いじゃないし。
面差しを縁取るおとがいの線がすっきりしてて、
この角度から見上げるとまず目に入る、
首元のごつっとした線とか鎖骨の窪みが、こんな色っぽいのは反則で。

 「なあ。」
 「んん?」
 「俺んこと…。」

そういう相手って意識し始めたのはいつだったのか、なんて、
そうそう訊けることじゃあなくて。
どした?なんて 見つめてくんのへ、
いや、もういい、なんて。言いかけてやめてしまったらば。


  「そうだな、〜〜〜くらいだったかな?」
  「……。/////////」


  おーい。
  ……。////////
  おーい、つむじしか見えないんすけど?
  ……。////////
  おーい、耳の先が凄っげぇ赤いんすけど?
  ……うっさいな、このショタコン。////////


それ、ぜってぇ言うと思った、なんて。
そうと言いつつ、
なのに…何がそんなに可笑しいか、くつくつと喉奥震わせて笑うのが、
耳へだけじゃなく、頬を寄せてた胸板からも伝わって来て。
笑われてんのが癪ではあったが、
でもさ、うん…なんか、
腹立ってもそんくらいの理由で こっから離れるのは ヤだったんで。
ま・いっかって、寛大にも許してやる。

虫の声を遮ったのは、表を通り過ぎてったらしい車の走行音で。
窓を開けていたものか、女性ボーカリストのか細い声がふっと聞こえた。
何てったかな、あれ。
今 流行ってんだよな。
何も言わないままでそんな目を向けると、
小学校の当番みたいな名前、口にして、
お前がああいうのも聴くとは思わなかったなんて、また笑うから。
いいかげんにしとけよなって、凄む代わり、
身を起こすとそのまんま、胸元へ顔から倒れ込み、

 「あ…こら、って、やめんか。」

鎖骨の上のやわいとこ、ちくりと吸ってのお仕置き完了。
これでラフなカッコや着替えのたびに、
思い出しての反省しなと、
つけたばっかの鬱血を、指先でなぞって愛でてると。

  ―― 起きてると悪さばっかしやがってよ、って、

早く寝ろなんても言われたけれど。
寝苦しくないはずなのに何でだか、
全然眠くなんないんだもの、しょうがねぇじゃんか。
天窓から見下ろすのは、ほんのこないだ満月だった真珠色の月。
眠くないのは俺だけじゃねぇもんよと、
物言わぬお顔にこっそりささやいて。
気持ちのいい肌へ口許擦りつけ、まだまだ甘える気満々のお猫様。

 「……。」
 「何だよ。」
 「別に。」

やわやわの唇で、みぞおちやら胸筋やら擽られても、
秋大会の最中だからと堪えてる、
やさしくって健気な男心も判ってあげてほしい、そんな秋の夜長だったそうである。






 Little AngelPretty devil 〜ルイヒル年の差パラレル

    “秋の蜜月” 〜たとえばこんな明日はいかが?



  〜Fine〜  08.9.21.


  *秋の夜長についつい…なのは、もはやいつものパターンですね。
   甘いばかりで大した代物じゃあないので、
   隠してませんで すいません。
(苦笑)



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